夜間補正機能
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WDR・HDR技術の仕組みと違い

白飛びや黒つぶれが発生する原因とリスク

ドライブレコーダーの映像を見返した際、トンネルの出口で画面が真っ白になったり、夜道の暗がりが真っ黒で何も見えなかったりした経験はないでしょうか。これはカメラが持つダイナミックレンジ(明暗の表現幅)の限界によって引き起こされる現象です。

人間の目は非常に優秀で、明るい場所と暗い場所を瞬時に調整して認識できます。しかし、カメラのレンズとイメージセンサーは、一度に取り込める光の量の範囲が決まっています。そのため、トンネルの出口のように暗い場所から急に明るい場所へ出るシーンでは、明るい外の光に合わせて調整が追いつかず、画面全体が白く飛んでしまう白飛びが発生します。逆に、明るい場所から急に暗いトンネルに入ったり、街灯の少ない夜道を走行したりする場合は、光量不足で映像が黒く塗りつぶされる黒つぶれが起きます。

これらの現象は、単に見づらい映像になるだけでなく、事故の証拠能力を著しく低下させるリスクがあります。たとえば、逆光状態で交差点に進入した際の信号機の色や、夜間に当て逃げされた際の相手車両のナンバープレートが、白飛びや黒つぶれによって判読不可能になる可能性があります。映ってはいるが、肝心な部分が見えないという事態を防ぐために開発されたのが、WDR(ワイドダイナミックレンジ)やHDR(ハイダイナミックレンジ)と呼ばれる画像補正技術です。

映像を補正するWDRとHDRの技術的な違い

WDRとHDRは、どちらも明暗差の激しい環境下で映像を見やすく補正する技術ですが、そのアプローチには違いがあります。メーカーによって定義が多少異なる場合もありますが、一般的な技術特性について解説します。

HDR(High Dynamic Range)は、露出(明るさ)の異なる複数の映像を瞬時に撮影し、それらを合成することで適切な明るさの映像を作り出す技術です。具体的には、明るすぎて白飛びしそうな部分を暗めに撮影した画像と、暗すぎて黒つぶれしそうな部分を明るめに撮影した画像を重ね合わせます。これにより、明暗差が極端に大きいシーンでも、すべての領域がクリアに視認できる映像を生成します。補正能力に関してはHDRが非常に強力で、特にナンバープレートの識別などに効果を発揮します。

一方、WDR(Wide Dynamic Range)は、主に演算処理によって画像全体のコントラストを調整し、見えにくい部分を補正する技術を指します。HDRのような複数枚合成を行わない(あるいは異なる方式で行う)ため、映像処理の負荷が比較的軽く、動きの速い被写体に対しても自然な映像を残しやすいという特徴があります。ただし、極端な逆光時などの補正能力に関しては、HDRに一歩譲る場面もあります。

現在販売されているドライブレコーダーの多くは、これらの技術のいずれか、あるいは両方を搭載しています。一般的にはHDR機能搭載モデルの方が白飛び防止に対して強い効果を持つとされていますが、WDR搭載モデルでも日常使用には十分な性能を持っているものがほとんどです。

夜間走行やトンネルで真価を発揮する補正機能

WDRやHDRといった補正機能がもっとも真価を発揮するのは、光の条件が過酷なシチュエーションです。特に注意したいのが夜間のナンバープレートの記録です。

夜間、前走車や対向車のナンバープレートに自車のヘッドライトが直射すると、その強い反射光によってナンバープレート部分だけが真っ白に輝き、数字が読み取れなくなることがあります。これは典型的な白飛び現象ですが、HDR機能を搭載したドライブレコーダーであれば、強い光を抑え込んで数字をくっきりと浮かび上がらせることが可能です。当て逃げやあおり運転の被害に遭った際、相手を特定するための重要な手がかりを守ることにつながります。

また、西日が強く差し込む夕暮れ時の運転や、立体駐車場から屋外へ出る瞬間など、ドライバー自身が眩しいと感じる場面でも、これらの補正機能は確実に動作します。人間の目が眩しさで一瞬状況を見失うような場面であっても、ドライブレコーダーは冷静に周囲の状況を記録し続ける必要があります。

機種選定の際は、スペック表にHDRWDRの記載があるかを確認しましょう。特に夜間の運転が多い方や、トンネルの多いルートを通勤で使用する方は、より補正能力の高いHDR対応モデル、あるいは夜間撮影に特化したセンサー(STARVISなど)を併用しているモデルを選ぶことで、万が一の際の安心感を高めることができます。価格だけで選ばず、こうした画像処理技術の有無をチェックすることが、失敗しないドライブレコーダー選びのポイントです。